
【医師監修】
痛風

- 幸手クリニック 院長
- 山崎昌洋先生に監修していただきました。
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痛風は関節内にたまった尿酸塩結晶が剥がれることで引き起こされる激痛
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一般的に知られる痛風(痛風性関節炎)のほかに関節や耳たぶ・指の腹などにしこり・コブができる痛風結節
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尿酸値を正常値に戻しても、関節にたまった結晶は2年ほど残る
尿酸値の高い状態は痛風の引き金に!
痛風と尿酸値の因果関係
尿酸の産生と排泄のバランスが崩れ、高尿酸血症の状態が続く、つまり尿酸値が高い状態が続くと、尿酸が関節内にたまっていきます。関節にたまった尿酸塩結晶が剥がれる際に急激な炎症が生じ、激痛がはしります。
この激痛の発作がいわゆる痛風です。
痛みなどの症状は治療をしなくても10日程度でおさまるので、放置する人もいます。
しかし、痛風には様々な合併症が隠れていることがあるので、痛風発作を身体の悲鳴ととらえ、すぐに対応することが大切になります。
痛風の主な症状
痛風性関節炎は最も典型的な症状で、上述のとおり、主に下肢の一箇所の関節に突然激しい痛みが生じて腫れます。痛みが始まって24時以内にピークを迎え、1週間から10日ほどで痛みは消えていきます。
痛風性関節炎は通常は急性の発作ですが、発作を繰り返していくうちに慢性化し、多数の関節に炎症を頻発するような状態となることもあります。
痛風結節は、尿酸塩の沈着とそれに反応した肉芽組織がしこりとなって現れます。耳たぶが多く、足やひじ、手の指、ときには鼻などもあります。健診や治療の普及した近年ではすぐにわかるような痛風結節を見ることは稀ですが、高度の高尿酸血症の場合は注意深く観察すると指の腹などに見られることもあります。
触ると痛いケースもあれば、痛まないケースもあります。痛まないからと言って、放置をしないでください。
実は腫瘍であったというケースもあります。
痛風結節は高尿酸血症の治療により、消失することもありますし、結節ができるほどの高尿酸血症であれば、その他の合併症が隠れている可能性も高いです。
痛風を予防するには?
血清尿酸値 7.0mg/dL以上の場合に高尿酸血症と診断されます。
尿酸は6.4mg/dL以上となると体液中の溶解限界を超えて、結晶してくると言われていますが、尿酸値だけ高くて症状の全くない方の場合、どのぐらいの値であれば治療により痛風発作を予防できるかは明確な証拠がありません。
米国のデータですが、痛風を一度発症した方で、血清尿酸値が6.0 mg/dL未満で長期間維持出来た方は痛風の再発が少なく、痛風関節炎がほぼ完全に消失したことが示されています。1)2)3)
古いデータですが、血清尿酸値が8.0mg/dL,特に9.0mg/dL を超えると、痛風発作が起きやすいことが示されています4)5)。
以下に「高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン 第2版」から高尿酸血症の治療指針を引用します。
まとめると、痛風発作を起こしたことがある方、尿酸値が8.0㎎/dL以上でほかの合併症のある方、尿酸値が9.0mg/dL以上の方は生活習慣の改善だけでなく、薬物治療が勧められるということになります。

引用元:高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン 第2版より参考
http://www.tukaku.jp/wp-content/uploads/2013/06/tufu-GL2.pdf
ここで言う生活指導とは下記のような内容ですが、痛風だけでなく、生活習慣病全般の予防につながる大切なことですから、ご自身でその必要性を理解していただくことが一番大切なことです。
- 食生活を改善し、適度な運動を行い肥満を解消する
- 高プリン食を控える
- プリン体の多いアルコールを控える
- 過剰なアルコールの摂取を控える
- 普段よりも多めの水分補給を心がける(2000-2500mL程度を目標)
- ストレスをためない
痛風の治療方法は?
痛風の痛みはかなり激しいので、短期間とは言え、皆さんの生活の質(QOL)に大きなマイナスの影響をもたらします。そのため、痛風発作時の急性期の治療としては苦痛の除去が最優先になります。それが落ち着いてから痛風の再発を予防するための長期的な高尿酸血症の治療が必要となります。
痛風発作が起きたら、まずは出来るだけ患部を冷やして安静にしてください。それから、お酒を控えてください。
医療機関ではコルヒチン,非ステロイド抗炎症薬(いわゆる痛み止め),副腎皮質ステロイドなどが処方され、関節炎の鎮静化が図られます。
発作時に血清尿酸値が変動すると発作が悪化することが多いため、発作時に新たに尿酸降下薬を処方することはありません。今まで飲んでいた方はそのまま続けます。
尿酸値が7.0 mg/dL以下であっても一度痛風にかかった人は要注意
尿酸値を基準値7.0mg/dL以下に下げたとしても、一度痛風に罹患した方、高尿酸血症であった方は要注意です。血液中の尿酸が低下しても、関節にある尿酸塩結晶がなくなったわけではありません。この沈着した尿酸塩結晶がなくなるには2年ほどかかると言われております。尿酸値が正常化したからと油断せず、尿酸のコントロールを続けることが大切です。その際の目標値は前述のとおり、6.0㎎/dLと低めの目標にしたほうがよいでしょう。
1) Sarawate CA, Patel PA, Schumacher HR, et al : Serum urate levels and gout flares ; Analysis from managed care data. J Clin Rheumatol 12 :61-65,2006
2) Schumacher HR Jr, Becker MA, Lloyd E, et al : Febuxostat in the treatment of gout ; 5-yr findings of the FOCUS efficacy and safety study. Rheumatology(Oxford)48 : 188-194, 2009
3) Becker MA, Schumacher HR, MacDonald PA, et al : Clinical efficacy and safety of successful longterm urate lowering with febuxostat or allopurinol in subjects with gout. J Rheumatol 36 : 1273-1282, 2009
4) Hall AP, Barry PE, Dawber TR, et al : Epidemiology of gout and hyperuricemia ; A long-term population study. Am J Med 42 :27-37,1967
5) Campion EW, Glynn RJ, DeLabry LO : Asymptomatic hyperuricemia ; Risks and consequences in the Normative Aging Study. Am J Med 82 :421-426,1987

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